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October 04, 2007

荻野アンナ『蟹と彼と私』○

 初出「すばる」2005年4月号〜2006年11月号。芥川賞作家の荻野アンナが食道癌に冒された恋人〈パタさん〉との日々を綴った長編小説。
「介護小説」として話題になっているのは、同時に両親の介護が描かれているからだろう。40代からの介護生活に恋人の闘病がくわわった、いわばトリプル介護である。むろん仕事もしなければならない。倒れないほうがおかしい。
 が、あくまでも小説である。病状や治療などについての具体的な事柄も含まれてはいるが、おもに描かれているのは死に向かう者に添った〈私〉の心象風景である。闘病記としては異色だが、しだいに濃度を増す死の気配はリアルに伝わってくる。お得意の寒いダジャレや滑稽な妄想シーンに凄みを感じる。〈パタさん〉死後の章はとりわけ深く心にしみた。

★★★★(2007.8.28 白犬)

集英社 1800円 978-4-08-774872-7

posted by Kuro : 01:20

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