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January 19, 2007

中島義道『醜い日本の私』○

 初出「考える人」2002年夏号〜2005年冬号。『うるさい日本の私』(新潮文庫)でブレイクした哲学者・中島義道先生おなじみの激辛日本文化論。このオッサンのすごいところは、言うだけれはなく行動するところだが、今回のおもなテーマは「景観」である。私鉄沿線の商店街をはじめとする街々の見苦しさについて縷々述べられているが、景観ともなると騒音とちがってやすやすと文句をつけられないためか、薬の量販店に店頭のはみ出し商品を引っ込めさせるなどの変則技でお茶をにごしている。
 本書を読んで気づいたのが、都会で生活していると、あらためて空を見上げることがほとんどないということだ。そこで、外出した折に注意して見てみたら、ありましたありました、黒々と縦横無尽に張りめぐらされた電線が。先生のおっしゃるとおり、たしかに美しくないが、あれをぜんぶ地下に埋設することはおそらく不可能であろう。軟弱なわたしなどは、電線にとまって羽を休めている冬スズメに情緒をかんじたりするが、そんなこと、この先生のまえでうっかり口にしようものなら、言い終わらないうちに無視されるか、コテンパンにやられるかのどちらかだろう。まあそれでも、こうしたことに真っ向からがみがみ言う人がひとりくらいいてもいいと思う次第。

★★★★(2006.12.31 白犬)

新潮社/新潮選書 1000円 4-10-603573-1

posted by Kuro : 02:52

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