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October 06, 2006

クリスチャン・ガイイ『ある夜、クラブで』○

 妻のために音楽を捨てたジャズピアニストのシモン。業務用暖房システムのエンジニアとして地道に暮らす日々。ところがある夜、出張先の海辺の町でジャズクラブに案内される。ライブ演奏に耳を傾けているうちに、彼はとてつもない誘惑に襲われる。ステージで黒く輝くあのピアノの鍵盤に、一瞬でもいいから触れてみたい。妻の待つパリに戻る電車の時間は迫り――。
 いやあ、これはまいった。冒頭から引き込まれ、なにもかも忘れて読みふけってしまった約180ページ。この読後感をどう表現したらいいだろうか。あまり期待もしないで行ったジャズクラブで、まったく思いがけなくすごいライブに当たってしまい、気がついたら看板で、バーテンダーに放り出されたような気分とでもいおうか。フランスで発売後たちまちベストセラーになったというのもわかる。
 ジャズに捧げられたような本だが、ジャズ好きじゃなくてもじゅうぶん楽しめることを保証する。このドライブ感、お子様にはわかるまい。

★★★★★(2005.1.4 白犬)

"Un Soir au Club" by Christian Gailly 野崎歓・訳 集英社 1600円 4-08-773422-6

posted by Kuro : 23:49

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