« 大石英司『神はサイコロを振らない』●○ | Blog Top | 伊坂幸太郎ほか『I LOVE YOU』○● »

January 14, 2006

藤原伊織『シリウスの道』○

 初出「週刊文春」2003年11月6日号〜2004年12月23日号。
 38歳の辰村祐介は大手広告代理店の副部長。ある日、彼の部署に大手弱電メーカー、大東電機から新規競合の話が舞い込む。予算は18億円。できる女上司とともにコンペの準備に取りかかる辰村。そんな辰村に大東電機の半沢常務から連絡が入る。相談したいことがある――子供時代を大阪で暮らした辰村には二人の親友がいた。勝哉と明子。この明子こそ半沢常務の妻であり、彼女には封印された過去があった。
「このミス」2006年版第6位。掲載誌の週刊文春2005ミステリーベスト10では7位。
 電通の社員だった藤原伊織(2002年退社)の広告業界ハードボイルド。大プロジェクトをめぐる駆け引きに、悲劇的な過去の物語をからませた快作。企業小説としても読み応えあり。
 大手広告代理店の副部長なんていうと、今流行りのちょいワルおやじを思い浮かべてしまうが、その伝でいけば主人公の辰村はちょいダサおやじ。独身貴族にはちがいないが、飲みすぎて背広を着たまま寝てしまい、翌朝そのまま出社したりするだらしのなさに加え、馬をやっているので貯金もない。だが、そんなダサさも魅力に数えられるようなカッコいい男である。自分の始末は自分でつける。女上司が彼にほれるのもわかる。

★★★★☆(2005.12.1 白犬)

文藝春秋 1714円 4-16-324020-9

posted by Kuro : 17:04

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/162

このリストは、次のエントリーを参照しています: 藤原伊織『シリウスの道』○:

» 藤原伊織の最新作『シリウスの道』あの期待を肩すかしされた傑作 from 日記風雑読書きなぐり
広告業界、異彩のサラリーマンが現場で大活躍するその展開に引き込まれて、電車を乗り過ごした。だが直後に藤原伊織のあのイメージからは期待がはずれた凡作と思った。そ... [Read more...]

トラックバック時刻: January 14, 2006 06:11 PM

» 藤原伊織「シリウスの道」 from イイオンナの為の「本ジャンキー」道
私が女性だからかもしれません。 なにかに没頭する男性の姿は非常にセクシーでそして魅力的です。 この本の主人公「辰村」もそんな男性の1人だと思います。 ... [Read more...]

トラックバック時刻: January 30, 2006 01:41 AM

» 「シリウスの道」藤原伊織 from AOCHAN-Blog
タイトル:シリウスの道 著者  :藤原伊織 出版社 :文藝春秋 読書期間:2006/01/16 - 2006/01/20 お勧め度:★★★★★ [... [Read more...]

トラックバック時刻: February 3, 2006 09:50 PM

comments

コメントをどうぞ。




保存しますか?