« 佐藤正午『花のようなひと』○ | Blog Top | 石田衣良『てのひらの迷路』○ »

January 03, 2006

ドン・ウインズロウ『ウォータースライドをのぼれ』○

「じつに簡単な仕事でな、坊主」――養父にして朋友会の雇われ探偵グレアムが持ち込んできた仕事は、人気テレビ番組のホスト、ランディスによるレイプ疑惑事件。ニールの任務は、被害者のポリーにきちんとした英語を教えて磨きあげ、裁判の証人として通用するようにしろというヒギンズ教授も真っ青な内容だった。かくして世にもキテレツな英会話教室が始まる。ポリーの口封じを狙うランディス、彼女を売り出そうとたくらむポルノ雑誌、さまざまな謀略がからみ合う事件の顛末。
〈ニール・ケアリー〉シリーズ第4長篇。11歳のときにグレアムに拾われたニールも、もはや28歳。恋人カレンのもとで、朋友会の仕事のせいで中断していた論文執筆にいそしむ日々。だが、そんな幸せで満ち足りた時間は(ファンにとっては嬉しいことに)そう長くは続かない。グレアムの口車にまんまと乗せられたニールはしぶしぶ「マイ・フェア・レディ」の育成に取りかかる。ポリーに対するニールの横暴な態度を小学校教師のカレンがやさしくたしなめるシーンがいい。「どこから見てもおつむの弱い尻軽女」ポリーがどう変身するかは読んでのお楽しみ。
 あとがきに「本シリーズは5作をもって完結」とあるのを見てさびしくなっちゃったけど、いい頃合いなのかも。これほどはずれのないシリーズものもめずらしい。おすすめ。

★★★★☆(2005.9.4 白犬)

"A Long Walk Up Water Slide" by Don Winslow 東江一紀・訳 東京創元社/創元推理文庫 980円 4-488-28804-9

▽ニール・ケアリーシリーズ既刊

posted by Kuro : 01:59

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/158

comments

コメントをどうぞ。




保存しますか?