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November 17, 2005

松尾由美『雨恋』○

 オーディオメーカーに勤める沼野渉は海外赴任する叔母から留守宅に住んでくれるよう頼まれる。品川の高級マンション。家賃は無料。ただし月々1万数千円の管理費を負担することと、2匹の子猫の世話が条件だった。動物を飼ったことのない渉はとまどいつつも引き受ける。
 新生活のすべり出しはなかなか快適だった。だが、間もなく渉はマンションの部屋にもうひとり、姿の見えない住人がいることに気づく。
 雨の日にだけ出てくる女の幽霊をめぐるミステリー仕立ての恋愛小説。3年前に自殺したことになっている幽霊はじぶんの死に納得しておらず、主人公が事件の解明に乗り出す。こういうふうに書くとヒマな熱血漢みたいだが、主人公の沼野渉は「社会人としても個人としても一種の停滞期にある」と自覚する30歳の独身男。それでも探偵としての能力は意外にも高く、幽霊が知りたいと願う事件の闇の部分は次第に明らかになって行く。
 謎が解明されるにつれ、最初は声しか聞こえなかった幽霊の姿が足元から少しずつ見えてくるとは大胆だが、それもひとつのお楽しみということで。女子向け。

★★★★(2005.7.10 白犬)

新潮社 1400円 4-10-473301-6

posted by Kuro : 00:10

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