« 北原保雄・編『問題な日本語』○ | Blog Top | 菊池直恵『鉄子の旅 1集』○ »

April 12, 2005

柳原慧『パーフェクト・プラン』●

 2005.1.29初版。2004年2月宝島社刊。わずか1年で文庫化ですから、もちろん単行本は買っていない。俺も学習するようになったな。とりあえず宝島社と幻冬舎は文庫になるのが早い。それはさておき第2回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

身代金ゼロ!
せしめる金は5億円!
“誰も傷つけない”
ノンストップ・誘拐ミステリー

 と帯に大々的にかかれていれば、ついつい手がでてしまうというもの。みごとに裏切られましたが。
 なんか、おもしろくなーい。メインとなる誘拐事件はもちろん、それ以外にも代理母、児童虐待、株取引、2ちゃんねる、ハッキングなどなどいろいろ詰め込んであるんですが、ただそれだけ、という印象。ほんの1年前に出たもの(書かれたのは2年ぐらい前ってこと?)にしては、古くさすぎる。いちいち説明してくださるのも、まあわからない人にとっては必要なのかもしれないが鬱陶しい。
 登場人物も、あまり気の利いた連中はいない。誘拐犯人側もつまらないが、なにより、特殊班所属でありながらパソコンにも詳しい美人刑事鈴村馨に魅力がないのが致命的。天才ハッカーのヨシュアにしても、だもんな。だいたいラスト、してどうする(笑)。
 文章もイヤ。なんだか時代遅れのおっさんだなあと思ったら、著者は女性(1957年生まれ)。会話も、なんだかこっぱずかしい。犯人チームの会話なんてもう……。

「おっと、ゆっくりしてる暇はねえ。早いとこ車を出して、ズラかろうぜ」(p.40)
「来た!」
「ユー・ガット・メール! 誰からだ?」
「三輪です! 三輪! ついに来ました!」
「ひゃっほーい!」(p.72)

 あたま痛くなります。ズラかろうぜ、っていつの時代の人間だ。ユー・ガット・メールなんて実際に口にする搨人間がいたらお目にかかりたい。それよりその感嘆符の大サービスはなんだ。
 というわけで、まるっきり楽しめませんでした。最後まで読んでも、はいはいよくできましたね、というだけの感想しか残らなかった。感想をネットで検索してみると、けっこう評判いいんですねえ。

☆(2005.4.10 黒犬)

宝島社/宝島社文庫 695円 4-7966-4452-0

posted by Kuro : 23:36

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/55

comments

黒犬さん、はじめまして。
コメントありがとです。
「パーフェクト・プラン」という表題に伴わない内容でしたよね〜(笑)
こういう作品がこのミス1位をとれるのが謎です。
これからもよろしく♪

投稿者 アスラン : April 13, 2005 11:47 AM

アスランさま。
コメントありがとうございます。
新人だから多少未熟なのは仕方ないとは思いますが、でもこのかたの場合、デビュー作ということでもないようですし。ちょっと首をひねってしまいますよね。
むしろ同時に優秀賞をとった『ビッグボーナス』のほうが私は楽しめました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

投稿者 黒犬 : April 15, 2005 02:13 PM

コメントをどうぞ。




保存しますか?