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March 20, 2005

テッド・ヘラー『エディターズ!』○

 ザッカリー・アーレン・ポストは泣く子も黙る大手出版社〈ヴェルサイユ・パブリッシング〉の看板雑誌『IT』編集部のアソシエイト・エディター。採用の最低絶対条件は才色兼備という難関をくぐり抜けて入社したザッカリーだが、残念ながら活躍の場には恵まれない。そんな彼の前に強力なライバルが登場。正真正銘のハーバード大卒マーク・ラーキンは、最初の編集会議から「手腕」を発揮、たちまち出世街道の追い越し車線へ。ザッカリーと同僚のウィリー・リスターは嫉妬と憎悪を募らせる。
 表紙に〈マスコミ志望者必読!!〉というシールが貼り付けられているが、ニューヨークと日本じゃ同じエディターでも大違いである。そこんとこ勘違いして大手出版社に入っても、マホガニーのデスクを置いたゴージャスな個室なんか、社長にでもならないかぎり無理。まあ、それだけに海の向こうでは出世競争もかなり熾烈なことになっているらしく、小説とはいえ、ライバル同士の足尾引っ張り合いは半端ではない。空いたポストをめぐっての攻防は、まさに命がけである。最後に笑うのは誰か。それは読んでのお楽しみ。
 テーマは暗いが、ザッカリーの一人語りとしたことで軽妙な仕上がりとなっている。たいくつな夜におすすめ。

★★★★(2005.3.6 白犬)

"Slab Rat" by Ted Heller 小原亜美・訳 角川書店/BOOK PLUS 1000円 4-04-897029-1

posted by Kuro : 14:29

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