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February 07, 2005

一目惚れ作品

 こちらのサイトおもしろい企画があったので頭をひねってみました。
 題して『【恋の始まり】小説・映画編』。

「恋の始まり」には、「ひと目惚れ」タイプと「いつか恋していた」タイプがあるんでしょうか。

 てなわけで、小説や映画などにおける主人公たちの恋愛のきっかけで分類するという企画です。
 簡単に思いつくだろうと思いきや、けっこう苦戦してしまいました。この小説は熱烈な恋愛だったよなあ、という記憶はあっても、さてそのきっかけはとなると案外あやふや。記憶力も年々低下していますし。
 もしかしてもっと適当なものがあるのでは、と思いつつ、なんのことはない、ごく最近読んだものが〈ああ、これぞまさしく〉とヒットしたのでありました。そのタイトルは『スパイク』(松尾由美 光文社/光文社文庫 533円)。

 カバーに《長編恋愛ミステリー》と書かれているんですから間違いなく恋愛小説です。もちろん男女が出会います。そしてその出会いは偶然です。これぞ一目惚れと言わずしてなんと言いましょう。
 下北沢に住む28歳のOL、江添緑はビーグル犬の“スパイク”を飼っています。飼っているからには毎日散歩が欠かせません。その日彼女はいつものようにスパイクを連れて散歩に出ます。向こうから歩いてくるのは犬を連れた青年。すれ違おうとするとお互いに同じほうに寄ってしまいます(よくありますねそういうこと)。

 初めて会った相手なのに、なぜかなつかしいような笑顔だった。その顔を、今では一箇所にかたまっている犬たちのほうに向け、自分の犬の名前を呼んだ。(p.10)

 どうですこれこそ正統派のボーイ・ミーツ・ガール(いやこの場合主人公は女性なのでガール・ミーツ・ボーイでしょうか)。
 なんと彼の連れている犬は、緑のスパイクと同じビーグル(見た目もそっくり)、そしてさらに驚くことに名前も同じ“スパイク”だったのです。そんなきっかけでふたりはオープンカフェでコーヒーを飲むことに。話ははずみ、お互いに気に入り(もっとも小説は緑の視点で書かれているので、相手も緑が気に入ってるかどうかはっきりするわけではありませんが)、後日の再会を約束します。ところがその約束の日、彼は姿をあらわさない……。いったいなぜ。がっかりした緑が家に帰ると、もうひとつの衝撃が彼女を襲います。
 というような冒頭部分。あまりあらすじを書くとつまらなくなってしまいますのでこれくらいにしておきますが、ある意味《究極の恋愛》とも言えそうです。
 著者は91年に「バルーン・タウンの殺人」ハヤカワSFコンテストに入選してデビューした人。SFコンテスト出身というぐらいですから、一筋縄ではいきません。犬を飼っている人にはお勧めの小説です。犬は苦手だなーという“おかあさん”には『バルーン・タウンの殺人』(早川書房/ハヤカワ文庫JA 562円)なんかはいかがでしょうか。いずれも奇想天外な設定で現実味は薄いかもしれませんが、だからこそ楽しめる世界であることは確かです。

★★★★(2005.2.7 黒犬)


 映画ではたとえば、今は亡きクリストファー・リーヴ主演の『ある日どこかで』(原題:Somewhere In Time, 1980 ヤノット・シュワルツ監督)も“一目惚れ”系かな。
 アマゾンのレビュー(映画評論家・的田也寸志氏)からその冒頭を引用するとこんな感じ(ちなみにカスタマー・レビューはあまり読まないほうがいいです。けっこう無神経にストーリーをばらしてる人がいるので。できればあまり前知識を持たずに観るのがよろしいかと思います)。

 1972年、新人劇作家のリチャード(クリストファー・リーヴ)は謎の老婦人から古い金時計を渡された。そして8年後、彼は古い肖像画の貴夫人に魅せられ、それが老婦人の若き日の姿(ジェーン・シーモア)であることを知る。

 相手が老婦人だからって(おいおい)、一目惚れしちゃいけないって法はありませんわな。これもまた美しくもせつないラブストーリーです。そういえば原作の邦訳『ある日どこかで』(リチャード・マシスン 尾之上浩志訳 東京創元社/創元推理文庫 980円)も出ています。がこれはやっぱり映画を観るべき。私は映画でハマり、ビデオやサントラを買いあさり、邦訳がないので原書を探したけど見つからずくやしい思いをしたものです。今ではDVDも出てるし原書だってAmazonで買えるし、便利な世の中になったものです。

★★★★★(黒犬)


posted by Kuro : 23:30

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comments

こんにちは。
さっそく呼応してくださって、すごくうれしいです。
TBも有り難うございます。
どれも読んだことのない本、見たことのない映画でした。
まず「ある日どこかで」を見たいな、と思いました。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿者 ahaha : February 8, 2005 02:14 AM

ahahaさま。
コメントをどうもです。案外細かいところは忘れちゃってるもんですね。
「ある日どこかで」は私のオールタイムベストのひとつなのでぜひぜひご覧下さい。
でも、よく考えてみたらほんとうに一目惚れだったんだろうか……という気もしてきました(笑)。

投稿者 黒犬 : February 9, 2005 03:33 AM

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