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August 18, 2007

坂東眞理子『女性の品格 装いから生き方まで』○

 2006年10月発売。2007年8月中旬までに160万部を達成した話題の新書。
 著者は1946年生まれ。東大を卒業後、総理府入省。入省の翌年に結婚。二児の母。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事、女性初の在豪州ブリスベン総領事。内閣府初代男女共同参画局長を経て退官。現在は昭和女子大学長という、ものすごいキャリアウーマンが、「強く、優しく、美しい女性になるための66の法則」を説く。
 こ、これはすごい。まじすごい。読む前に帯の「上品な女性は――」として挙げられた17項目を見ただけで、わたしおろおろしてしまったよ。
 礼状が書ける、約束をきちんと守る、型どおりの挨拶ができるなどの、社会人心得めいた、いわゆる一般常識はまだいい。ふつうである。しかし、花の名前を知っている、得意料理を持つ、愛されるより愛する女性になる、恋はすぐに打ち明けない――あたりからどんどん怪しくなってくる。きわめつけは「品格ある男性を育てる」である。これはじぶんの息子をりっぱな男に育てなさいと言っているのではなく、パートナー、つまり結婚相手をりっぱに磨いてやりなさいと言っているのである!(本文参照) わたしあなたのママじゃない〜って百恵が歌ったのはいつだったか。古きよき良妻賢母教育を受けたオバサマや、その賢母に育てられたマザコンおやじの「そうだそうだ!」という声が聞こえてきそうでゾっとする。
 坂東先生ご本人が自著の宣伝記事を寄稿されている「文藝春秋」八月号で、くしくも、塩野七生先生がバッサリぶった斬ってくださっているので、参考までに引く。

 この書物は、つまらない男にとってのみ好都合なツマラナイ女、の多量生産に最適だと思う。だけどなぜこの日本では、つまらない女ではやっていけるはずのない高級官僚を経験した人が、つまらない女の多量育成にこうも熱心になるのだろう。ヒラリー、メルケル、ロワイヤルという時代なのに、日本では一昔前の賢女の育成か。(中略)いいかげんに、女ならば女のことを心配するという習性から脱してはどうであろう。(「文藝春秋」2007年8月号/連載コラム「日本人へ」より)

 うん、わたしもそう思う。なんでいまさら、オトコだけが順番に威張りまわるだけのシステムを、わざわざ、ご丁寧にも、サポートしてさしあげなければならないのサ。こうした反発を予測したうえでのベストセラーなのかもしれないと勘ぐりたくもなるが、だとしたら、まじめにオファーに応えた著者はいい面の皮であろう。長きにわたり女性政策に携わってきた、女のミカタであったはずの著者が、しょせんスカートをはいたオッサンだったとしか思えないのだから。トンデモ本の殿堂入り決定。

☆(2007.7.17 白犬)

PHP研究所/PHP新書 720円 4-569-65705-2


posted by Kuro : 15:56

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