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July 07, 2007

篠田節子『純愛小説』●○

 2007.5.31初版。初出「野性時代」の4篇。
 タイトルからすると恋愛小説集なんですけどね。おとな――30代とか40代とか――の衝動的な恋愛、というくくりでいいのか。しかしまあ相変わらず底意地の悪さがたまらない篠田節子(笑)。
 なので結果、恋愛部分よりもその滑稽さグロテスクさのほうがきわだってしまい、むしろホラー小説集と呼びたくなってしまうのでした。
 35歳の妻子もちの男が12歳年上の女に《ハマ》ってしまう「蜂蜜色の女神」がそこはかとなくオソロシゲであった。小説のおもしろさって、よほどキツく書かれない限り、登場人物は(基本的に)そこそこの容姿であると勝手にイメージしちゃうからねえ。

★★★☆(2007.6.30 黒犬)


 初出「野生時代」。妻子あるちょいワルおやじの“本気の恋”に巻き込まれた女友達を描く表題作ほか4編を収録。
 うまい。盛りを過ぎた男女の、傍目には滑稽でしかない恋愛および性愛が、じつにきちんと描かれている。もう恋はしないと思っていたのに――中年らしい屈託から一気に突っ走ることができないもどかしさ。だが、いったんタガがはずれてしまったが最後、おおいに迷惑する周囲の人々。だから脳内だけにしときなさいって。アハハ。
 全編甲乙つけがたいが、家付き独身女性の波乱の晩年を描いた「鞍馬」がもっとも印象に残った。

★★★★(2007.7.15 白犬)

角川書店 1400円 978-4-04-873779-1


posted by Kuro : 16:15

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