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December 10, 2006

藤堂志津子『桜ハウス』○

 初出「小説すばる」。かつてひとつ屋根の下で暮らした4人の女の現在と過去を描く連作小説集。
 家主の蝶子が46歳、間借り人が41歳、36歳、31歳と、主要登場人物に5年ペースの年齢差をもうけたことで彩り豊かなストーリーに仕上がっている。無理のない書き分けに作者の力量を感じる。いいタイミングでオトコを投入するところなどもさすがである。
 だが。この女たちのつつがなさには、どうしても前時代的なものを感じてしまう。いまふうに離婚や婚外子の問題が盛り込まれているが、そんな個々人の波乱のエピソードも、友情ならぬ疑似家族愛というフィルターを通過したとたんに平均化してしまうものらしい。いろいろあったけどともかくよかったじゃない、ってことでお茶にされてもなあ。わたしは桜ハウスの住人にはなれそうにもない。

★★★☆(2006.11.26 白犬)

集英社 1500円 4-08-774825-1

posted by Kuro : 23:53

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