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July 17, 2006

R.D.ウィングフィールドほか『夜明けのフロスト』○

 クリスマス当日の早朝、家に寝に帰る前に署に立ち寄ったのが運のつきだった。着衣に血痕が付着した捨て子が保護され、糖尿病を患う少女が失踪、百貨店の金庫があばかれ大金が持ち去られる。クリスマス休暇でどこもかしこも人手不足だというのに、次から次へと舞い込む「びしょ濡れのズロースみたいに厄介な」事件。恨めしさをつのらせながらもしぶしぶ捜査にあたるフロストだった。
 名探偵ものを集めた『探偵稼業はやめられない』、猫ものの『子猫探偵ニックとノラ』に続く〈「ジャーロ」傑作短編アンソロジー〉第3弾。今回はクリスマス・ミステリー7篇を収録。
 フロスト警部シリーズの新作が出たと思って喜んでいたらアンソロジーでした。ちぇっ。いやいやいや、フロスト以外の6篇も翻訳ミステリファンにはうれしい。たとえばナンシー・ピカードの「Dr.カウチ、大統領を救う」。レジナルド・ヒル「お宝の猿」はダルジール警視&パスコー警部もの、ピーター・ラヴゼイ「殺しのくちづけ」はピーター・ダイヤモンド警視ものです。でもやっぱり、表題作「夜明けのフロスト」が、他6篇より長めの中篇であることがいちばんうれしい。マレット署長、相変わらずいい味だしてます。

★★★★☆(2006.6.23 白犬)

"Seven Stories of Christmas" 木村仁良・編 芹澤恵ほか・訳 光文社/光文社文庫 571円 4-334-76162-3

posted by Kuro : 23:38

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