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May 07, 2005

青池保子『『エロイカより愛をこめて』の創りかた』○

 少女漫画史に輝くスパイ・アクション『エロイカより愛をこめて』の誕生秘話や制作裏話、そして作者のデビューからこんにちまでの歩みを綴った絵入りエッセイ集。わたしはマニアじゃないが、『エロイカより愛をこめて』は連載時に“現役”で読んでいたこともあり思い入れは深い。本書限定の書き下ろしカット、そしてプロットから完成原稿に至るプロセスなど、ファンにとっては垂涎もののお楽しみ満載。
 しかし15歳でデビューして以来、描き続けるということのすごさよ。とうぜん浮き沈みはある。

 読者アンケートの成績の悪い私は、いつの間にか戦力外になっていった。
 本誌から増刊へうつり、当初は巻頭カラー、次は中巻頭からカラー一枚か二色つき、そのうちカラーもなくなりページも減る。掲載場所も後ろへ下がっていき、登場回数も減っていく、巻末32ページまで行くと最後通牒といってもよい。(中略)
 眼病と契約の解除を電話で編集に伝えると、しょうがないなあ、じゃあ、お見舞いでも出しますか、と投げやりに言ってくれた。何のお見舞いもなかったけど。
 たまたま同じ頃、ある売れっ子作家も別の眼病に罹っていたが、彼女の元には局長以下編集者たちが、果物籠を持ってお見舞いに駆けつけたと聞いている。
 売れないということはこういうことだ。(p.204)

 そうして講談社との専属契約を打ち切りフリーになった彼女は、間もなく秋田書店の『プリンセス』でエロイカの連載を開始する。上の文章は「あれから三十年。すでに定年退職した当時の編集者たちには、独立独歩の転機を作ってくれたことに感謝している」と締めくくられている。
 ちなみに青池先生の座右の銘は「おだてとモッコには乗るな」である。

★★★★(2005.4.26 白犬)

マガジンハウス 1500円 4-8387-1563-3

posted by Kuro : 16:30

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