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March 21, 2005

阿部和重『グランド・フィナーレ』○

 第132回芥川賞受賞作。新聞広告に「最後の大物、受賞」と出ていたのには笑ったが、デビューして10年、第111回、第118回、第125回と3度も敗れた末の受賞である。大物扱いされてもしょうがない。「新人といえる立場ではない僕が素直に喜んでいいものかなと」とご本人も余裕の照れっぷり。
 自らの不埒な性癖のために家庭生活が破綻、おめおめと田舎に引っ込んだ男の生活と心象を描く。奈良での陰惨な事件と重なったせいもあり、NHKあたりでは苦し紛れに「特殊な性的趣味」と説明していたようだが、ようするにロリコンです。とはいえ、ロリコンそのものにさほどの目新しさはない。むしろ並行して語られる愛娘への思いを興味深く読んだ。長い間、顧みることのなかった故郷で男はなにをみつけたか。
 主人公〈わたし〉の故郷は『シンセミア』の舞台となった神町。作中にストーリーを引き継いでいる部分があるが、未読でもだいじょうぶ。

★★★★☆(2005.2.8 白犬)

講談社 1470円 4-06-212793-8

posted by Kuro : 00:54

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comments

昨日も、ここにコメント書こうかどうしようか迷ったまま、帰りました。
「グランドフィナーレ」、挫折したままになっています。

今日はお礼にあがりました。
過日は、黒犬さんに「爆笑本」や「感涙本」を教えていただき有難うございました。この企画はいったん終了し、また2−3ヵ月後にトップ記事にしたいと思っております。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

投稿者 ahaha : March 26, 2005 07:34 AM

ahahaさま、こんばんは。
じつは私も白犬の感想をきいて手が出ませんです(笑)。
「新潮45」では小谷野敦がケチョンケチョンに書いてましたし。
いやべつに、絶対読まないと決めたわけではなくて、他に読むものがなければ読むでしょうけど、先に読みたいのがたまっていて……。
ああ、でも感想も書かねば。

投稿者 黒犬 : March 27, 2005 02:24 AM

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