坂東眞砂子(ばんどう・まさこ)


【長篇】
道祖土家の猿嫁
曼荼羅道

【短篇集】
夢の封印
葛橋
13のエロチカ
神祭

【エッセイ・NF】




道祖土家の猿嫁  4-06-273644-6

講談社/講談社文庫 819円


 2003.1.15初版。単行本は2000.1講談社刊。
 土佐を舞台にした土着大河小説。明治中期に土地の名家道祖土家に嫁いできた蕗の嫁人生・姑人生、そして道祖土家の面々の人生をだだーっと綴って百年分。
 いやあまいった。まいりました。古い時代の話だからどうしても記述が説明的になりがちなのと、終章の“自分語り”が鬱陶しいのが気に入らないけれど、そんなのは些細なことです。
 圧巻。『曼荼羅道』よりよかったです。

★★★★☆(2003.2.1 黒犬)



曼荼羅道  4-16-320520-9

文藝春秋 1857円


 2001.11.15初版。本年度(02年)柴田錬三郎賞受賞作。
 第二次大戦中にマレー半島に渡った富山の薬売り蓮太郎は、そこで現地妻サヤと暮らしていたが、彼女をおいて帰国してしまう。戦争が終わり、サヤは蓮太郎を追い、朝鮮人ということにして日本へ“引き揚げ”る。蓮太郎には当然妻子がいるのだが、サヤは富山の地で生活を始める。これが昭和篇(とでもいえばいいか)のとっかかり。
 蓮太郎の孫にあたる麻史は東京で製菓会社に勤めていた。同じ研究職の静佳と結婚していたが、不況のあおりをうけ揃って失業してしまう。しかたなく富山に戻り売薬業を営むことにして、渋る静佳とともに帰郷した。これが平成篇のあたま。
 昭和22年の話と現代の話が交互に綴られていく。ふたつの時空をつなぐのは一冊の懸場帳である。
 例によっての坂東眞砂子かという出だしだが、ちょいSFより。日本軍の蛮行(従軍慰安婦とかそのあたりの話ね)についてのつっこみが弱いような気がしたが、まあこの小説としてはあんなもんか。結局は男女の問題に集約されていくので。
 力作。ですが、まとめかたにはちょっと不満です。

★★★★(2002.10.7 黒犬)



夢の封印  4-16-320950-6

文藝春秋 1333円


 ああ、しまった。岩井志麻子『チャイ・コイ』を読んだ直後にこんなものを読んでしまった。大失敗である。銀座の久兵衛で中トロの握りを食べた直後に、つぼ八で解凍マグロの刺身を食ったみたいな、そんな気分。物事にはなんでも適正な順番があるのだ。
 坂東眞砂子のエロ小説。――アスファルトの亀裂から噴きこぼれる、情熱と官能。都会暮らしに倦んだ男女に訪れた、七つの欲望の物語。
 なんだってこの人は、こう古くさいんだ。タヒチなんかに住んでるからか。まじ、どれくらい古くさいかというと……。

「オールド・ミスとシングルは違うもん。オールド・ミスってのは結婚できなかった女、シングルってのは結婚を選ばなかった女。それに、私、ずっと自動車学校で事務やってるつもりはないもん。今、ソムリエの通信教育を受けているんだ。一流レストランのソムリエになって、優雅なシングル・ライフを送るってわけ」(「蓬莱ホテル」p86)

 いまどきの女が「オールド・ミス」とか「〜もん」とか言うかふつう。優雅なシングル・ライフってどんなのよ。だいたいこのセリフ、だれに説明してんだよ。読む順番の問題だけじゃないような気がしてきた。ぶうぶう

★☆(2002.6.7 白犬)



13のエロチカ  4-04-873233-1

角川書店 1300円


『マリー・クレール』連載の官能小説集。少年少女性の目覚めと若い女の海外体験というかんじか。こっぱずかしさを越えるものがなにもない。

 ペニスは牛蒡天ほどの硬さと太さになっていた。(「放っておいて、握りしめて」p109)

 いくらんなんでもゴボ天はないだろう。好きなのかゴボ天

★☆(2000.9.19 白犬)



神祭(じんさい)  4-00-023347-5

岩波書店 1500円


『死国』坂東眞砂子の短編集。初出「へるめす」「オール讀物」「世界」。土佐かメイン州かという気がしますなあ。都会で生まれ育った人がどういう感想を持たれるのか聞いてみたい。「隠れ山」いい。『ぼっけえ、きょうてえ』よりおもしろい。

★★★★(2000.8.21 白犬)



葛橋  4-04-873143-2

角川書店 1500円


 ずいぶん前に書いたよーなやつが3本入ってる中編集。おそらく「死国」の映画化にあわせてなにか出したかったんだろうけど、今年(去年)は『旅涯の地』を出したばっかだし、もう旧作でいいっすからお願いしますよ、ってことだったのでしょう。わはは。知らないけど。
 んで、3本。あっという間に読めました。たいした話じゃありません。都会もんの俺には怖さが伝わらないのさっ。怨念関係も官能関係、なんか先が読めてしまってイマイチ。★★☆ぐらいかな。配分は「一本樒」と「葛橋」が各0.5点、「恵比須」が1.5点。

★★☆(1999.2.17 黒犬)

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last updated : 2003/2/11
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