佐藤多佳子(さとう・たかこ)


【長篇】
神様がくれた指

【短篇集】
サマータイム
黄色い目の魚

【エッセイ・NF】



サマータイム  4-10-123732-8
新潮社/新潮文庫 400円


 2003.9.1初版。『しゃべれどもしゃべれども』で話題になった佐藤多佳子のデビュー作。月刊MOE童話大賞受賞作の表題作とその姉妹篇三作を収録。
 『サマータイム』は、11歳の進と姉の佳奈が13歳の広一と出会う始まりの物語。続く『五月の道しるべ』は佳奈が小学生だった頃の話。『九月の雨』は16歳の広一。そして『ホワイト・ピアノ』ではまた佳奈が登場。
 4篇の中ではやはり『サマータイム』いい。次をあげるなら広一の『九月の雨』だろう。なせかというと、わたしは佳奈という女が好きじゃないからだ。自分勝手で強情。身近にいたらそうとうイライラさせられるだろう。はっ、もしかしてあたしって佳奈に似てるのか。

★★★(2003.9.18 白犬)


黄色い目の魚  4-10-419003-9
新潮社 1500円


 2002.10.30初版。初出は「小説新潮」が多いのだけれど、もとは学生時代に児童文学サークル誌に書いた短篇だそうです。それを十年越しで膨らませた、と。
 木島悟16歳。サッカー部GK。特技似顔絵。死んだ父とは小学5年生のときに、一度だけ会ったことがある。
 村田みのり16歳。叔父はイラストレーター兼漫画家。自宅には居場所はない。叔父のアトリエだけが落ち着ける場所。
 ふたりが高校で出会い、すれ違いながら理解しあっていく“恋愛グラフィティ”。
 ちょっと気恥ずかしいですがね、なかなかよかったと思います。ステキな叔父様が芸術家であったり、悟の妹がすごい恋愛の修羅場に身を置いたりと、ちょっとファンシーな嘘っぽさが鼻につかないではないけれど、まあテーマが絵だったりするのでしょうがないでしょう。

★★★☆(2003.9.10 黒犬)


神様がくれた指  4-10-419002-0
新潮社 1700円


『しゃべれどもしゃべれども』佐藤多佳子の娯楽長編。
 出所したばかりの「スリ」辻牧夫は、電車に乗り合わせた少女の“スリ眼”を見る。「幕が三人、鉤が一人」辻はスリのチームプレーを見破り追跡を開始するが、返り討ちに遭い意識不明に。「医者も警察も勘弁」の辻に救いの手をさしのべたのは、ギャンブル狂の占い師マルチェラだった。
 読み応えじゅうぶん。予測不能の展開、知る人ぞ知る“専門職”の仕事ぶり。買って損なし。

★★★★☆(2000.10.23 白犬)


 2000.9.20初版。『しゃべれどもしゃべれども』('97)以来の佐藤多佳子('62生まれ)書き下ろし長編。
 主人公は出所したばかりのスリ、マッキーこと辻牧夫と、司法試験ドロップアウト組で今は女装の占い師、マルチェロこと昼間薫。偶然出会って同居をはじめた二人とその周辺の人々――スリ仲間、占いのクライアント、家族、恋人(?)――とあやしげな事件。
 飽きさせず最後まで読ませるのは構成力の妙か。
 残念だったのは、悪役の弱さ。前作ではみんな善人だったので気にならなかったのだが、本作では主人公からして犯罪者だったりギャンブル好きだったりするし、強烈な悪役が出てくるのだが、いかんせん著者の人のよさなのか、あまり〈悪い〉って感じがしない。べつに悲惨なほどの悪辣さは求めないんだけどね。
 次はどんな芸を見せてくれるか、先が楽しみな作家です。

★★★☆(2000.11.21 黒犬)

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last updated : 2003/10/8
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