恩田陸(おんだ・りく)
2002.11.30初版。あの夏、あの川のほとりで少女たちになにが起きたのか……恩田陸待望の書き下ろし三部作、第一弾。評価保留。
2002.2.20初版。特別書き下ろし『六番目の小夜子』番外編を含むノン・シリーズ短編集。
「春よ、こい」ユーミンの歌。
「茶色の小壜」同僚は元看護婦。
「イサオ・オサリヴァンを捜して」日系LURP。
「睡蓮」睡蓮の下にはきれいな女の子が埋まっている。
「ある映画の記憶」封じ込められた真実。
「ピクニックの準備」書き下ろし。高校生活最後のピクニックで。
「国境の南」喫茶店の女。
「オデュッセイア」ココロコ年代記。
「図書室の海」特別書き下ろし。『六番目の小夜子』番外編。
「ノスタルジア」女友だち。
著者は今年でデビュー10年とのこと。大長編SF『グリーンスリーブス』の予告編として書かれたという「イサオ・オサリヴァンを捜して」いい。その大長編とやらを読みたくなる。
2001.7.25初版。初出「KADOKAWAミステリ」2000年5月号〜01年5月号。
恩田陸のジェットコースター・ノベル。東京駅を舞台に、契約の締切りに追われる生保会社社員、こどもミュージカルのオーディション参加者、大学ミステリ研究会の学生、来日した映画監督、過激派テロリストなどなどが折り重なりひしめきあい、あっちこっちで接触し、さあどうなるどうなる、と先を急がせるコメディ・サスペンス。
映画によくあるパターンですが、よくこれを小説にしたもんだ。しかしやはり小説にはあまり向いてないような気も。どうしても間延びしちゃうしね。集中して読めればいいんだけど、細切れだと話がどこまで進んだのか、いちいち戻らないといけないので読みづらい。
でもまあ、うまいことまとめてます。映画なら1ショットで済ませられるところが数ページにわたってしまうというのは仕方ないんですが。
迫り来るタイムリミット、もつれあう28のマトリックス。必死の思いでかけまわる人々が入り乱れぶつかりあって、倒れ始めたドミノはもう誰にも止められない!
生命保険会社社員、子役タレント、俳句好きのおのぼりさん、ミステリ研学生、都銀総合職OLなどなど、それぞれの「その日」を生きる28人が、偶然という名の必然に導かれ東京駅に大結集するという話。奥田英朗『最悪』の拡大おふざけ版とでもいうか。展開早く飽きないが、もう少し「華」がほしい。真面目な人がセオリー通りにふざけてみましたという感じ。組み立てのうまさが裏目に出たか。コメディにはもっと緩急が必要なのかもしれない。
2001.7.15初版。単行本は1997年7月刊。
まぼろしの稀覯本『三月は深き紅の淵を』をめぐる4つの物語。オムニバス長篇。
第一章では、招かれたオトコが不可思議な屋敷でその本を探す。
第二章では、ふたりの編集者がその作者を捜す。
第三章では、事故死した女子高生の元家庭教師が、教え子の死の真相を追う。
最終話では、なぞめいた学園での怪奇譚。さらには作者らしき人間の影も見え隠れする。
1章、2章はまだしも、3章、4章となると、やや「本」との乖離が大きくなり、それが惜しいところ。
読んでる最中はおもしろいなあと思いながら、終わってみるとちょっと拍子抜けというか肩すかしというか。なんでだろ。
表題はケイト・ブッシュのセカンドアルバムより。おおなんと懐かしい。
いくつもの時代を生き、細胞に刻まれた想いを頼りに、束の間出会い別れていく男と女。求め合うふたりを、西洋名画に着想を得て豊かに描く「SFメロドラマ」連作集。
舞台はイギリス。登場人物もオール外人。読み始めはなんだかむずむずして困るが、そのうち慣れる。それぞれに着想を得たという中扉の名画が作品の格調を高めるのに一役買っている。
2000.12.20初版。「小説新潮」に99年から2000年にかけて掲載された5篇。
ネイサン『ジェニーの肖像』へのオマージュ。読んだけど忘れたなあ。
時空とびこえ恋愛ファンタジーというか、輪廻転生ファンタジーというか。『リセット』読んだばかりだから共通点と相違点が際立ちます。こっちのほうが(俺にとっては)説得力があった。
それぞれの章扉にはカラーの絵が配され、その絵画が描かれた時代が舞台となる。さまざまな時代でいっしゅんだけ巡り合う、エドワード・ネイサンとエリザベス・ボウエン。彼らの時空を越えた結びつきはいったい何によるものなのか――。
理屈に説得力はあるけど、心情的に納得できないというか(笑)。よーするに×××××××のエゴじゃん、とか。いいんですけどね。
「このミス2000」作家別得票数第一位で“2000年は恩田陸の年だった”とまでいわれた恩田陸。翻訳家の柿沼瑛子氏が「一回やってみたかったんだもん」と一人の作家で順位をつけている。その一位が本書「ネバーランド」。
男子校の寮で年越しをすることになった「居残り組」4人の一週間を描く。
「よし、聖夜にふさわしく懺悔大会といこう。ただね、俺重いものを背負わされるのは嫌なんだ。秘密ってのは重たいもんだからね。繰り返すようだけど、俺は神父じゃない。だから、お互い自分の身を守れるように一つだけルールを考えたから、それに従ってもらえないかな」
「ルール?」
「うん。一つだけ嘘を混ぜてほしいんだ」(p39)
あとがきに“当初は「トーマの心臓」をやる予定だったが、書いてるうちにだんだんほのぼのしたものになっていってしまった”とあるが、これってわかる人にしかわかんないだろうなトシがばれる(笑)。
ちなみに柿沼氏の二位以下は「麦の海に沈む果実」「象と耳鳴り」「木曜組曲」「月の裏側」「上と外」でした。
2000.7.10初版。初出「小説すばる」98年5月号から99年11月号まで断続的に掲載されたものに加筆修正。
エリート進学校の寮の冬休み。実家に帰らず年を越そうという三人――美国(よしくに)、光浩、寛司、に加えて、自宅通学生なのになぜか通ってくる統(おさむ)。四人それぞれに、誰にも話したことのないドラマがあって、という話。
評判いいですねえ。今頃読むのは遅いですか。
帯の表4ネームにはちょっと騙されたか。本文抜粋なんですがね、“嘘をひとつだけ混ぜて”懺悔大会をやる、みたいなことが書かれていて、なんか《青春百物語》か(なんじゃそりゃ)ってなムードだけど、じっさいはちょっと違っているんだな。
帯や宣伝では、ことさら《青春ミステリ》を強調していたが、ミステリにこだわることないでしょう。これは青春小説として(ちょっとトーンが甘いかな)楽しめばいいと思う。一部、キッツイところもあるけど、上出来でしょう。うまいね。
薄くてすぐ読める祥伝社400円文庫の一。
無人の島で発見された三つの死体。餓死、全身打撲死、感電死。死亡推定時刻は限りなく近い。偶然による事故死なのか。上陸したふたりの検事が謎に挑む。
テーマ競作「無人島」の4作のうちのひとつらしいですが、ぜんぶ読んで比べる気にはなりませんなあ。
2000.11.10初版。祥伝社文庫15周年記念特別書き下ろし作品。
やっぱ短くてぜんぜん物足りませんなあ、400円文庫。
廃墟の無人島(軍艦島がモデルか)に降り立った若い検事がふたり。無人島で発見された三つの死体の謎――殺人なのか事故なのか、三人に関係はあったのかなかったのか――を解こうという趣向。表4には“息詰まる攻防”などと書かれていますが、ぜんぜん息詰まらないです。どちらかというとのどかな頭脳ゲーム(だけど理屈で考えちゃうとそんなにむずかしい謎ではなかったりして)という雰囲気ですな。
小品としてはいいのかな。でも、どうしてもこのあと、もうひとつどんでん返しがあるんじゃないかとか、思ってしまった。なかったです。ちぇっ。
2000.9.25初版。親本は97年10月。
オムニバスというか連作短編集というか、舞台もあちこち人物もあれこれ、関係があったりなかったりのお話集。ファンタジー、としていいのかな。
なんか、いいなと思った。簡単にいってしまえば「常野」という東北のある土地に住んでいた、超能力者たちの話です。その土地を追われ、各地に散らばった彼らの一般人との生活、彼らがふたたびその「約束の地」に集まろうとする顛末、そんなエピソードが語られるのでした。とはいっても、エピソードがひとつの大きな流れに収斂していくという大河小説タイプのものではなくて、あくまでエピソードの積み重ね。不幸があったり救いがあったり。
続編(いま「青春と読書」に連載しているので、いずれまとまるでしょう)が楽しみな本でした。
初出「小説すばる」。連作短編集というよりエピソード集といったほうがいいか。
東北のどこかにあるという「常野」から来た彼らには、みなそれぞれに不思議な能力があった。時の流れに追われ、一般社会に溶け込みひっそりと暮らす人々は、その能力のために怯え、あるいは戦い、また静かに去っていく。
常野の人々を見守る長老的存在「ツル先生」いい。お子様好きのする「超能力者もの」とは違う。おすすめ。
2000.8.25初版。恩田陸が『グリーン・マイル』(S・キング)に挑戦、らしい。隔月刊で5巻構成、一冊が200枚強という分量ですから、全部で一千数百枚ぐらいになるのか。
キングぐらい偉くなきゃ買うものかなどと思ったりもしたけど、二冊出たところでつい。
舞台は中米G国――グアテマラですね。練と千華子は中学生と小学生の兄妹。両親――考古学者の父とPR会社で働く母――は離婚しており、練は祖父のところに居候している。年に一度だけ、父のいるところへ母と妹とともに出かけ、つかのまの元・家族をやることになっている。
今年の夏はG国で過ごすことになっていて、無事現地に到着したのはいいけれど、というのが第一巻。
まだ登場人物や彼らをとりまく状況など、背景説明がおもで、家族小説じみているけれど、恩田陸だからそれじゃあ終わらないでしょう。
今後の展開がたのしみです。
2000.10.25初版。一気にサバイバル小説だ!
2000.12.25初版。クーデターに巻き込まれ、監禁状態の両親。あてどなくジャングルをさまよい、どこか今までのものとは違うピラミッドを発見する兄妹。
なんとか脱出し、子供たちの救出に向かおうとする両親。どこからともなくあらわれた怪しい少年に導かれる兄妹。
いよいよ目が離せません。でもつぎは2月か。はあ〜。せめて月イチで出してほしいものだ。
2001.2.25初版。第4巻。ってことは次で終わり? どうまとめるのか。
今回は、謎の《成人式》――サバイバルレースに強制参加となった練(兄)が中心。千華子(妹)は囚われの身です。親たちは、日本から救助にあらわれた人々とコンタクトがとれて、日本留守番組はひと安心(でも子供たちは行方不明だから安心じゃないんだけど)というところ。おそらくこのあと、じいさんが重要な役割を担うのであろう、と予測。じつはじいさんもマヤ文明の末裔だとか。わはは。
次でどう終わるのか、お手並み拝見。
2001.6.25初版。全5巻じゃなかったのかよッ!
っつうことで完結しなかったし、隔月のはずだったのに大幅に遅れたし。
こういうのはがっかりだなあ。やっぱり最初に「5巻だもんね隔月だもんねキングだもんね」と大きなことを言うのなら、ちゃんとその通りにしないとね。枚数も、今回はやけに多いし。最後まで書き上げてから予告したらどうなんだ、って思う。かっこわるいです。やや評価下げたな。
話は、だなあ、なんかあんまり進展ないぞ。
次回はちゃんと完結してほしいものだよ、まったく。
2001.8.25初版。書き下ろし325枚。結局トータルで何枚になったんだろう。まあどうでもいいや。
当初5巻完結予定が6巻となり、刊行も遅れたりしたので、評価はぐーんと下がった。やっぱり一度やると宣言したらちゃんとやらなくちゃね。最初から明言しなければ気にならないんだから。
そんなわけで、きびしい目で読んだのだが……。
くやしいがすこし感動してしまった。予想はついていたお約束ばかりだったけれど、それでも盛り上がったと思う。
蛇足(というよりこれが書きたかったんだろうけど)は説教くさく、いかにも少年少女向けというかんじで、文句をつけようと思えばあれこれあげられるけれど、でもまあいいでしょう。許したる(えらそー)。
last updated : 2003/2/14
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