ロバート・クレイス(Robert Crais)

【長篇】
破壊天使(上・下)
サンセット大通りの疑惑
死者の河を渉る

【短篇集】

【エッセイ・NF】



破壊天使(上・下)
Demolition Angel  4-06-273473-7 4-06-273474-5
村上和久・訳 講談社/講談社文庫 上下各990円


 2002.8.15初版。原著(c)は2000年。探偵〈エルヴィス・コール〉シリーズで有名(でもないか)なロバート・クレイスの最新サスペンス長篇。
 主人公は元爆発物処理班員キャロル・スターキー。3年前に瀕死の重傷を負い、現在はLA市警犯罪共謀課の刑事。ある日、爆発物処理中の元同僚が爆死する。その犯人を追って、スターキーは自らのトラウマにも向かい合うことになる。犯人と目されるのは爆弾魔ミスター・レッド。彼を追っているATF捜査官ペルが加わり、捜査の行方は渾沌として……。
 映画化も決まっているようで、確かに盛り上がります。爆弾ものの定番“あと×分でこれが爆発する。そしたらおまえはバラバラだ、はっはっは”もあるしね。事件の謎、人間関係のあれこれも過不足なく、いったん死んだけど蘇生したという主人公の設定――当然アル中気味――もいい。多少甘ったるいところもあるけどご愛嬌でしょう。ずんずん引っ張っていって読ませるクレイスの筆力に問題はない。
 しかし……。
 翻訳ヒドい。ヒドいというのは酷かなあ。でも違和感がある。スターキーの会話文なんかは特に。かなりやさぐれた女性刑事だから、〜だわ、〜よ、なんて喋りかたはしないだろうから、それを極力排した訳文は努力賞なのかもしれない。しかし、やりすぎのきらいがある。
 いっぽう地の文では、英文をそのまま直訳したようなこなれない日本語が並んでいる。つまり、下手。
 講談社もヒドい。
 下巻目次大誤植。「デモリション・エンジェル(下)」とあり。仮題のまま見落としたのか。
 登場人物紹介欄ではペルは「FBI特別捜査官」となっている。しかしFBIは司法省だしATFは財務省の管轄で、まったく別の組織なのだが……。本文中、ペルの登場シーンではちゃんとATFと書かれている。まさかとは思うが……勘違い?
 いずれにしてもかなりいい加減な仕事をなさっているようで。

▽著者のオフィシャルサイトの当該ページはこちら。
 http://www.robertcrais.com/demolitionangel.htm

★★★★(2002.12.10 黒犬)



サンセット大通りの疑惑
Sunset Express  4-594-02870-5
高橋恭美子訳 扶桑社/扶桑社ミステリー 762円


 2000.3.30初版。“ロスの探偵エルヴィス・コール”シリーズ最新作(どうでもいいけどこのコピーやめれ)。
 前作『死者の河を渉る』からわずか2ヶ月で出ましたね。いったいどうしたんでしょう。さすがの私も前回の話を忘れてなかったからめでたい。内容的にも前回コールがルイジアナで知り合った弁護士との恋模様(笑)をひっぱっているのでした。
 原著は1996年の(c)っす。もうすぐ追いつくねえ。もう一作、コールものがあるのではやく出していただきたい。そのあとは時間があくでしょうから、新潮文庫で絶版になっている初期の二冊をぜひとも扶桑社で引き取ってください。
 さて、お話は。大富豪っぽいひとの奥さんが誘拐され死体で発見。とうぜんダンナがあやしいわけで事情聴取にいったら凶器っぽいものが発見されちゃって、そりゃ都合よすぎってゆうか杜撰ってゆうかあんまりな展開です。ところがどっこい凶器を発見した警官は、以前逮捕のときにミランダ勧告を言い忘れて犯人を逃したという過去があり、今回もそいつのでっちあげなんじゃなかろうかと弁護団。そのへんの調査をするために雇われたのが我らがコールなのでした。
 はっきりいって「事件」自体は前作ほど面白くない。緊迫感もない。ゆるい。だいたい筋は見えてるし。まあ今回は恋愛小説っすね。適度な中だるみというか(誉めてないぞそれ)。シリーズのファンサービスってことでしょうか(喧嘩売ってるっすねすいません)。はじめてのひとは別のやつから読んで下さい。

★★★(2000.4.15 黒犬)



死者の河を渉る
Voodoo River  4-594-02845-4
高橋恭美子・訳 扶桑社/扶桑社ミステリー 762円


 2000.1.30初版。ごく一部にはそこそこ人気のある、エルヴィス・コールというLAの私立探偵を主人公にしたシリーズものだ。
 今回は、養女である人気女優の、じぶんの本当の両親を探してくれという依頼から話ははじまる。あいかわらず軽くてへこたれないコールのようすに、ファンのひとりとしては安心。事件は、とうぜん背後の大きな事件につながっていき、もちろん危機一髪もあり、お約束ではありますが楽しめます。
 さて、今回気になった訳文は(笑)。
 ページは忘れましたが、コール視点の描写で、クラクションを鳴らされても「我関せずといった心境で」、みたいなところがありました。なんか違和感。我関せずって、第三者がその本人に対して、のときにしか使わないのではないか? そんなことないんですかね。どーでもいいか。
 ちなみにこのシリーズは『モンキーズ・レインコート』『追いつめられた天使』(新潮文庫・どうせ絶版でしょうよ)、『ララバイ・タウン』『ぬきさしならない依頼』『死者の河を渉る』(扶桑社ミステリー)が邦訳されています。いちおう扶桑社があと二冊は面倒みるらしいので安心だ。

★★★☆(2000.2.15 黒犬)

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last updated : 2003/2/16
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